「こんなところで落ち込んでいるなんて、イリア様には似合わない」

ゆっくりした足取りで、クリムゾンは王子に歩み寄る。

自分が羽織っていたマントを、肩にかけてやりながら、そっと耳元でささやいた。

「いっそのこと、私があの方を、この世から消して差し上げましょうか?」

もしも王子が頷けば、すぐに行動を起こすつもりだった。

けれども、何度同じ言葉を囁いても、結果はいつも同じこと。

イリアが首を縦に振ることはない。