「それは、悪かったな」
突然、部屋に響いたのは、感情に乏しい、だが、明らかに不機嫌な声だった。
ぎくりとして振り返ると、イリアがソファーに座っていた。

いつからそこにいたのだろう?
ひょっとして、ずっとあの場所に座っていたのだろうか。

「イリア様、仮眠をとられていたのでは?」
「煩くて目が覚めた」
「それは失礼を」

その言葉を最後に、金髪碧眼の青年は優雅に一礼して部屋から出て行った。

「ク……クリムゾンは、ど、ど、どこへ?」
「自室に戻ったんじゃないか?」
「じゃ、じゃあ、私も自分の部屋に……」

急いでベッドから滑り降り、扉に向かって走ろうとしたけど、思うように身体が動かない。
身体がふらつき、足がもつれて、そのまま床の上にへたりこんでしまった。