「イリア様にさ」

クリムゾンは意味深に微笑んだ。

「前に言っただろ? お前を一番特別扱いしているのはイリア様だってさ」

耳元でささやかれ、ユーリは全力で否定した。

「そんなはずないわ! 食事の時も、お茶の時間も、立ちっぱなしで給仕をさせられて……あてがわれた部屋なんて暗くて狭いし、ベッドは固いし、食事はじゃがいもばかりだし……」

本気で文句を言っているわけではなかったが、言葉はなかなか止まらない。

ようやく言葉が尽きた時、少し離れたところで何かが動く気配がした。