「とにかく、当分はおとなしく寝ていろ」
説教口調で告げながら、青年が燭台に火をともすと、部屋がぽうっと明るくなり、豪華な調度の輪郭があらわになった。
暗くて気づかなかったけど、運び込まれたのは、イリアの寝室だった。
びっくりして起き上がろうとした途端、またもやベッドに押し戻された。

「おとなしく寝てろと言ったはずだ!」
「でも、この部屋・・・」
「今頃気づいたか。お前をここまで運んだのはイリア様だからな。ありがたく思えよ」

困惑をあらわに周囲を見回していたユーリは、クリムの言葉にぎょっとした。
力仕事とはおよそ無縁なイリアが、ユーリを抱きかかえてあの中庭を走ったのだろうか。

「それだけじゃないぞ」
薄笑いを浮かべた男に、畳みかけるように言われてぞっとした。
イリアはここで自ら調合した解毒薬をユーリに飲ませ、そのあとも、ずっとユーリを看ていたというのだが……。

「嘘!」
「嘘だと思うなら、直接聞いてみろ」
「き、聞くって!?」