強引に手をつかまれて、思わず振り払おうとしたけど、手はぴくりとも動かなかった。

カップの破片で切った手の甲に、じんわりと血がにじんでいた。

取るに足らないかすり傷なのに力が入らない。

その原因はすぐにわかった。

蓋を開けたまま振り回した小瓶からこぼれた液体が、ユーリの右手を濡らしていた。

ふわりとただよう甘い香り。

白い肌の上をゆっくりと伝い流れていく、毒と鮮血が交じり合った、不自然なほど赤い色。