子供を取り囲んだ自分たちが、こんどは味方の、しかも、近衛の軍装に身を固めた精鋭部隊に囲まれている。

兵士たちを背後に従えているのは、不遜なオーラを放つ一人の少年だった。

漆黒の髪、漆黒の瞳。

軽く腕を組み、虫けらでも見るような、冷ややかなまなざしをこちらに向けている。

さらに男達をあわてさせたのは、年に似合わぬ豪奢な軍服だ。

ビロードの軍服を飾る金の縁取りと金刺繍は、軍を統率する最高級の士官にのみ許されたものであり、宝石を散りばめた胸飾りには王家の紋章が刻まれている。

「消えろ」

少年が感情のこもらぬ声を放つと、男たちは、自分たちの獲物を置き去りして、蜘蛛の子を散らすように走り去った。