「どのぐらい上達したか見てやってもいいぞ」

王子の唇からふと漏れた言葉に、紫の瞳が不思議そうに瞬いた。

「私のことはおかまいなく」

いやだという空気が露骨に伝わり、イリアは複雑な顔をした。

確かに、剣術の師として、クリムゾン以上の男はいない。

野戦で泥まみれになって指揮を執るぐらいなら、トイレ掃除でもしていた方が良いという男だが、もとをただせば、イリアの命をつけ狙う刺客の一人だったのだ。