敵国での日々は、穏やかに過ぎていく。

連れて来られた時は秋だったのに、今、窓から見下ろす景色は、暖かな春の日差しに包まれている。

うららかな晴天の日は、午後のティータイムが近づくと、第四離宮の侍女たちがそわそわし始める。

柔らかな光の中、花に囲まれた中庭で、優雅にティーカップを傾ける王子と、その傍らに立つ小姓の姿が見られるからだ。

王子が戦場で拾ってきた少年を、第四離宮の者たちは「銀の天使」と密かに呼んでいる。

銀の天使は、王子に対しては言いたい放題のくせに、他の者の前では、極端に口数が少なく、控えめで、いつも微笑をたたえている。

その優雅な物腰が、類まれな美貌とあいまって、人々の視線をいやおうなく引き付けるのだ。

漆黒の髪と瞳を持つ黒の王子と、銀糸の髪をもつ銀の天使。

二人は、近づきすぎることもなく、離れすぎることもない。

時折視線を交わし、何事かを語り合う姿は、淡い光の中に溶け込んでしまいそうなほど美しかった。