(そういえば、毒を盛られたことがあったって言っていたけど)

ユーリは、まずそうに食事をしている少年を流し見ながら、自分が「毒見役兼小姓」であることを、いまさらのように思い出していた。

「あの、私、お毒見しなくても良いのでしょうか?」

ためらいがちに声をかけると、イリアは食事を中断し、わざわざこちらに向き直った。

「何を言っている。 しなくても良いではなく、してはならない。残り物にも手を出すな」

「の、残り物!? だ、出しませんよ!」

真っ赤になって言い返すと、イリアは真顔で念押しした。

しつこいと思いながらも仕方なくうなずくと、何事もなかったように食事は再開され、一人で食事を終えた王子は、一人で部屋に戻っていく。

その背中を見つめ続けている自分に気がついて、ユーリはあわてて目を逸らした。