そんなことがあってから、ユーリは何となく落ち着かない。

積み上げた本の隙間から、そっとイリアを盗み見ていると、唐突に声をかけられた。

「何を見ている」

「クリムゾンの話は本当なのですか」

聞いたままを伝えると、イリアは本に視線を落としたまま、不機嫌そうに呟いた。

「クリムゾンめ、よけいなことを・・・」

「よけいなことじゃないですよ。刺客を差し向けてきたのは一体誰なのですか?」

「クリムゾンに聞け」

「聞いたけど、教えてくれませんでした」

「そうだろうな」

ぱたんと本を閉じたイリアは、別の本を手に取った。

「兄たちの取り巻きが細工して、時々刺客を送り込んでくるんだ」

そう言って示された本のタイトルは、「王位継承と内乱」。

弟を王位に就かせるために、兄を殺すというのは、よくある話だが、この国では、兄の取り巻きが、弟王子のもとに刺客を送り込んでくるという。