「軍事機密が記された書類をこんなところに放置して大丈夫なのですか?」

「この部屋に足を踏み入れることができるのは、我々二人だけなので、大丈夫……なはずだ……」

ユーリの手から書類を取り上げたクリムゾンの声は、尻すぼみに小さくなっていく。

「我々二人とは?」

「もちろん、グノーと俺……ああ、そうか、わかったぞ!」

困惑顔のグノーの肩を引き寄せながら、クリムゾンはパチリと指を鳴らした。

「ユーリを一番特別扱いしているのは、イリア様だ!」
「・・・・・・」

くだらない冗談を背中で聞き流し、ユーリは片付けを再開した。

イリアは本を出したら出しっぱなし、服も脱いだら脱ぎっぱなしで、放っておけば、広い部屋にも関わらず、だんだんと足の踏み場がなくなってくる。

本来なら、王子に片づけを期待すること自体ナンセンスだが、そうも言っていられぬ事情があった。