「アルミラ語は話せるようだが、文字は読めるのか?」

唐突な問いかけに、ユーリはたちまち緊張した。

周辺諸国の言語をマスターすることは、王族にとっては必要不可欠な教養のひとつだが、庶民の中には、自国の言葉すら読み書きできない者も大勢いる。

他国の言語を解するだけでも異常なのだ。

文字が読めるなんて口が裂けても言ってはならない。

しばらく無言のにらみ合いが続いた後、王子は唇の端を持ち上げた。

ちっとも少年らしくない冷めた微笑に、思わず眉をひそめた時、数枚の羊皮紙をつきつけられた。

「どうやら、馬鹿ではないようだな。今回だけは面倒だが付き合ってやる」

紙面には、ユーリの母国、リタニアの文字が並んでいた。