ライティングデスクを離れたイリアは、猫足のチェアに腰掛けた。

優雅に足を組み、頬杖をつきながら向けられたまなざしには、ひとつまみの優しさも感じられない。

「座れと言ったはずだが」

感情のこもらぬ声が、冷ややかに耳朶を打つ。

すすめるというより、命じる口調に閉口し、扉に貼り付くようにして佇立したまま、ユーリは無言でかぶりを振った。