ドレスの裾をもてあましながら、少年が無言で膝をつき、少女の手の甲に口付けた。

兄とよく似たハシバミ色の瞳が、ゆっくりと逸らされ、つかんだベールが翻る。

飛び出す二つの影。

それを追う男たちの怒号。

涙を拭ってくれる人はもういない。

逃げなくては。

少しでも遠くへ。

生きなくては。

過ごしでも長く。

こぼれそうになる嗚咽を唇をかんでこらえながら、ユーリは二人が去ったのとは別の方向に向かって駆け出した。