イリアは答えず、蒼白になって佇むローズの顔を流し見た。

「マルグリット様が取り巻きをひきつれて逃亡したそうですよ。貴女も急いだ方がいい」

バタバタと部屋を出て行く女に背を向けて、少年は宙を見つめている。

「イリア様、許してくださいとは申しません。せめて最後までご一緒させてください」

「傷は癒えた。俺は俺の足で処刑台に上がれる。介添えなど不要。それよりクリムゾンに伝えてくれ。今度こそ俺の命令に従えと……」

「従いませんよ」

声のする方を振り返ると、開け放った窓のそばにクリムゾン・オーツが立っていた。