「革命軍と旧アルミラ軍の間で戦闘を続けているうちに、周辺国の軍勢に取り囲まれてしまいました。このままでは国が滅びてしまいます。イリア様、どうか、どうかっ!」

わが身を投げ出すように跪いた男は、床に額を擦り付けた。

羽根ペンをインク壺に戻したイリアは、冷やかな目でかつての従者を見下ろした。

「ど、どういうこと!? アルミラが滅びるわけないじゃない!? この国はもうすぐ私のものになるって……」

背後で二人のやり取りを見守っていたローズが、うろたえた面持ちでイリアに詰め寄ってくる。

「国とともに滅ぶのがいやなら、どこへでも逃げればいい」

無表情だったイリアの唇に皮肉な笑みが浮かぶ。

「そ、そんなこと・・・」

「できないか、グノー? いや、セナ。では、お前も道連れだな」

「私はいい、私はいいが、罪もない者たちが・・・」