イリアが望めば、王座も世界も思いのまま。
そんなことは、わかっていたはずなのに・・・。

「俺は・・・何てことを・・・してしまったんだ・・・」
「お前、独り言が増えたんじゃないか?」

間近で聞こえた声に振り返ると、クリムゾン・オーツが立っていた。
口元には笑みがはりついているが、瞳には冷たい光が宿っている。

「ユーリと妙な取引をしただろう? あいつは真面目だから、イリア様が処刑されないのは、お前との取引のおかげだと思いこんでる。第三王子だか何だか知らないが、そんなことしていいと思ってるのか?」

言い終わった時には、グノーの喉元に短剣が突きつけられていた。

しばらく無言でにらみ合った後、グノーは短剣を突きつけられたまま、口を開いた。

「俺を殺しに来たのか?」

「もしそうなら、お前は今頃、息をしてないさ」