「でも、本当にだめだったの。一緒に逃げようって言ったけど、全然相手にしてくれなくて、それどころか、私をかばってひどい怪我を……」

「でも生きている! 今この瞬間だって生きて呼吸している!」

ユーリは驚いたように、クリムゾンを見つめている。

「前にも思ったけど、イリアのことが本当に好きなのね」

「まあ、そういうことだ」

感極まったような言葉に苦笑したクリムゾンは、気障っぽく手を差し出した。

「退却するぞ」

「でも、イリアが……」

「革命軍が血眼になって探しているから、今はここにいた方が安全だ。ああ、そうだ、革命軍を率いているは誰だと思う?」

「グノーなのね。そうなんでしょう!? 私、グノーと取引を……」

重い甲冑をあっという間に脱ぎ捨てたクリムゾンは、ユーリの腕をつかんで引き起こした。

「そんなくだらぬ取引は反故だ。とにかくいったん退却するぞ」

返事を待たずに、扉を押し開けた青年は、ユーリの腕をつかんだまま、暗い階段を駆け上がった。