「大丈夫ですから」

ちっとも大丈夫そうじゃない。
それなのに、少女は強引に微笑んでみた。

「蝋燭の予備はちゃんとあります。だから……心配しないで……」
「心配なんかしていない。明かりなんてどうでもいい」

それをよこせと手を伸ばすと、ユーリは振り切るように身を翻した。

「いい加減にしろ、もううんざりだ!」

女なのに、いや、人にかしずかれる一国の王女なのに、髪を切り、身を飾る宝石の一つもなく、こんな暗い穴倉のような場所で、お前は何をやっている?

「そこをどけ! 全て終わりにしてやる!」

ベッドから降り立ったユーリは、よろめいた途端に伸びてきた手を払いのけた。

「待って!」

すがりついてきた身体を力任せに突き放し、扉に向かう。

扉には鍵がかかっていた。

けれども、いつもユーリがしていたのを真似てノックすると、真夜中だというのに、扉の向こうで誰かが鍵を開ける金属製の音が聞こえてきた。