ほのかな明かりを周囲に投げかけていた手燭の火が消えたのは、その時だった。

闇の中でイリアはゆっくりと身を起こし、真鍮製の手燭を引き寄せた。

蝋燭が溶け、尖った芯がむき出しになっている。

これで喉を突けば死ねるだろうか。
いや、頚動脈をかき切った方が……。

真剣に思案していると、手の中のものを強引に奪われた。
寝ていたと思ったのに、いや、間違いなく眠っていたはずなのに。
闇の中に浮かび上がった顔は、今にも泣きそうに歪んでいる。

さっきまでイリアの手の中にあった手燭をしっかりと握る手が震えていた。