(俺が死ねば、ユーリは従者のもとに戻れるだろうか)

うつぶせに横たわったまま、イリアは思いをめぐらせた。

グノーがユーリに執着しているのだとしたら、その可能性は限りなく低い。

カリノ家の陰謀と言ってしまえばそれまでだが、グノーは十年以上の長きにわたり、側近としてイリアに仕えてきた。

だが、全ては擬態で、本当の彼はイリアの兄、セナ・アルフォンソだったのだ。

年の離れた弟に、顎で使われるというのは、どんな気持ちだろう?

俺は今まであいつの何を見ていたのだろう?

間断なく続く痛みのせいで思考力が鈍り、なかなか考えがまとまらない。

策をめぐらせ、人の心を操るのは簡単だ。
だが、身近な人間の心が、イリアにはわからない。

ベッドの傍らでは、少女が静かな寝息をたてている。

闇に慣れた目に白い頬が蒼ざめて見えた。

その頬に触れようとして無意識に伸ばした指を握り込んだ。

疲れていることは聞かなくてもわかる。

一つしかないベッドをイリアが占領してしまっているせいで、ユーリはまともに眠ることさえできないのだから。