「グノー! 何を考えているの!?」

ようやく足を止めた青年は、なおも突きつけられたままの剣を一瞥し、片頬だけで微笑んだ。

「確かに、グノー・ジュリアンはイリア・アルフォンソに仕える従者でした。だが、そんな男は、今はもうどこにも存在しない」

眉を顰めたユーリに向かい、グノーは肩をすくめてみせた。

「私はカリノ家の人間です。母の名はマルグリット。あなたが知っているセナ・アルフォンソは私の偽者だ。もっとも本人は、殺される直前まで自分が本物だと信じ込んでいたようですが……」