「目障りだ。早く行け」
「いやです!」
「だったら剣を抜け。俺はリタニアを滅ぼした敵国の王だ」

(そんなこと、できるはずないって、わかっているくせに)

「私に殺されるあなたのメリットは?」
「最初のシナリオ通りになる」
「私は私の復讐を、あなたはあなたの復讐をってこと? でも、自分で自分を滅ぼすなんて!」

ぎりっと奥歯をかみしめて涙をこらえた。
どんどん感情的になっていくユーリとは裏腹に、イリアのテンションは上がらない。

「生まれてはならなかったんだ。クリムゾンから聞かされなかったのか? 俺の母親は、お前と同じ亡国の姫君だ。この国に連れてこられ、王の妾にされたが、不義の子を身ごもって狂死した」

「不義の子?」

「俺の父親は先代の王じゃない」

「でも、どうして、そんなこと・・・」

「わかるさ。俺は夜毎その男の寝所に呼びつけられて、母親の代わりをさせられていたんだ」

つきつけられた真実の重さに愕然となった。

「父親って・・・」

茫然と呟くユーリを見て、少年が皮肉に微笑んだ。

「第一王子だ。半分血のつながった俺の兄だ。もう聞きたいことはないだろう? 早く行け」

顎をしゃくられて、無意識に一歩後ずさる。

けれども少年の闇色の瞳に浮かんだ絶望を見た時、思わず口を開いていた。

「イリア、それでも、それでも、私は……」