「クリムが王家の軍隊を率いて、反乱軍と戦っていることをご存知ですか?」

ユーリの切迫した声に、無表情だったイリアの顔がわずかに歪む。

「あいつは大馬鹿者だ。何度も出て行けと言ったのに、反乱軍に加われば、いくらでも未来が開けるはずだったのに」

吐き捨てるように告げられて、ユーリはこぶしを振り上げた。

「クリムがあなたを見捨てるわけないでしょう!」

人の心を操ることが得意なくせに、イリアは本当の意味で人の心が理解できない。

「どうしてわからないのですか?! クリムがあなたのそばにいたのは、お金のためでも、誰かに命ぜられたからでもなかったのに!」

振り上げたこぶしを振り下ろすことができぬまま、ユーリは相手をにらみつけた。

クリムゾンの気持ちがわからぬように、ユーリの気持ちもわからないのだろう。

他人の心だけでなく、自分の心だってわからないはずだ。