「た、た、大変! 大変だ!」

優男は、全身びしょ濡れの上、ぜえぜえと肩で息をしながら、イリアの前に崩れるように膝をつき、いきなり大声を張り上げた。

「どうした? 逃げられでもしたか?」

「ち、違います! 違うけど、小汚い小僧だと思ったら、そうじゃなかった!」

従者は苦しげに言葉を切り、額の汗を拭いながら、荒い息をついている。

全くテンションの上がらぬ王子とは裏腹に、そのテンションは上がりっぱなしだ。

「そうか。やはりあの少年は・・・」

グノーの言葉にクリムゾンは勢いよく振り返り、大げさに両手を振り回した。

「しょ、少年じゃない! お、女の子、それも、も、ものすごい美少女!」

「な、なんだと!? 確認したのか?!」

「確認って、そ、そ、そんな……」