ユーリは大広間に足を踏み入れた。

背後で勝手に扉が閉まり、窓のない大広間が闇色に染まる。

ちらりと見えた玉座と玉座に座る人のシルエットも闇に溶けてしまったが、ユーリは一瞬の迷いもなく、玉座のある大広間の最奥に向かって駆け出した。

途中の段差につまずいて派手に転んだが、痛いとは思わなかった。

「動くな」

感情のこもらぬ声が、闇の最奥、つまりは玉座のあった方向から聞こえてきた。

「その先にもう一つ段差がある」

起き上がろうとした中途半端な体勢で、ユーリは前方を仰ぎ見た。

静かな足音が近づいてくる。

ようやく闇に慣れてきた目が、近づいてくるイリアの姿をぼんやりと映し出した。