先代の王は切れ者だった。
おまけに無類の戦好きだった。

その血をもっと強く受け継いだ第一王子は、退屈しのぎで人を殺せる男だった。
優美な外見を裏切って、侵略戦争を繰り返し、侵略する先がなくなってからは、陰謀を巡らせ政敵を葬った。

イリアの智謀はその二人のはるか上をいく。
その気になれば、大陸どころか、世界全てを手中にすることだって、できるかも知れない。

だが、それをしなかった。

アルミラ国第四王子として生まれた彼が、知力の限りを尽くしてなしとげようとしたことは、アルミラ王家を倒すことと、自らを滅ぼすことだった。