「な、何なの、それ?」
「噂ですわ。みな、そのように申しております」

「そんな嘘を本気で信じているの? だって、ほらっ、私はこの通り生きているわ!」

「それは、ユーリ様があまりにもおきれいなので……」

急に小さくなったシンシアの言葉に、ユーリは耳を澄ませたが、おおよその内容を把握したところで、思わず悲鳴をあげそうになった。

ダンショクカという言葉の意味も、遅ればせながら理解した。
ユーリが小姓の姿をしていた理由を、男色家の相手をさせられていたからだと、思い込んでいるらしい。

「違う!全然違う!お願いだから話を聞いて!」

動転したユーリは、シンシアの肩をつかんで揺さぶった。

「それは陰謀よ!誰かがイリアを陥れようとしているんだわ!」

シンシアの灰青の瞳に驚きの色が交じる。

人形のように美しい姫君は、初めて会った時からずっと、人形のように虚ろだった。

王家に生まれた高貴さゆえだと思っていた。

そうでなければ、筆舌に尽くしがたい、辛い目にあったからに違いないと。