「私たちが敵兵を引き付けている間にお逃げ下さい」

深手を負った青年の顔は、血の気を失って蒼白だ。

それなのに、そっと頬に伸びてきた指先は、涙で濡れた少女の頬を優しく拭う。

ユーリは青年の大きな手に、自分の手を重ねてうなずいた。

王家に仕える青年がなすべきことは、王家の血を引くユーリを一分でも一秒でも長く生きながらえさせること。

そして、ユーリのなすべきことは、どんなことをしてでも生きのびること。

今となっては、それ以外の選択肢などありはしないのだ。