「何です、それ?」

王子を迎え入れた金髪碧眼の優男は、ユーリに指を突き付け、露骨にいやそうな顔をした。

「毒見役兼小姓だ」

口を開いたのは、むっとしたユーリでも、家来たちにかしずかれている少年でもなく、戦場からずっと王子に付き従ってきた短髪長身の男だった。

「毒見役は良いとしても、こんなに汚いのを小姓にするのは、ちょっと、まずくないですか」

不満げに呟きながら、優男がずかずかと歩み寄ってくる。

汚いなどと言われたのも、無遠慮に顔を覗き込まれたのも、生まれて初めてだ。

ユーリは肩を震わせ目を伏せた。

だが、不揃いに切られた髪を、汚いものでも触るようにつまみ上げた指先を、無造作に払いのけたのは、意外なことにイリア・アルフォンソだった。