(一緒にここを出るなんて本気じゃないわよね?)

何年も一緒にいるのに、ユーリはクリムゾンのことを、何も知らない。

ユーリが聞けば、クリムは大抵のことは教えてくれるけど、自分自身のことは何も話そうとしない。

自分のことを話さないのはユーリも同じだったから、あまり気にとめなかったけど・・・。

イリアからは、離宮で働く侍女や使用人と親しく口をきいてはいけないと言われているのだが、少しぐらいなら大丈夫だろう。

ためらいがちに、自分と同じ年頃の侍女に声をかけてみると、意外な言葉が返ってきた。

「今も昔もイリア様の正式な従者はグノー様だけよ」

「でも、クリムゾンは・・・」

「下男としてここにきたのよ」

「下男!?」

「ふふ、見えないわよね?」