「あの剣は確かにユーリには重すぎる」

クリムはぽつりと呟いて、次のグラスに手を伸ばした。

クリスタルのグラスは磨けば光る。
銀食器もしかり。
日々の気苦労を癒すなら、食器磨きにまさるものはない。

(本当に、あの剣は、色々な意味で重すぎる)

開放してやれば、ユーリは楽になるだろう。
だが、ユーリのもとにあの剣があることが、クリムゾンにしてみれば、唯一無二の希望でもある。

あの日、クリムゾンは、イリアが時間を稼いでいる間に城内を探索し、地下室へ通じる扉を見つけたが、扉には鍵がかかっていた。

鍵のありかを突き止めるために、接触した人間は全部で六人。
気絶させはしたが、一人も殺しはしなかった。
人殺しを生業としていたのは確かだが、人を殺すのが好きなわけじゃない。

だが、王家の人間はどうだろう。

第三離宮の地下室には、今もあの白骨死体が放置されている。