誰もいない地下室で、ユーリは動ける範囲でうろうろと動き回った。

さっきは蝶の標本しか目に入らなかったが、よく見れば、ベッドやテーブルの他、生活に必要な調度が一通り揃っている。

ベッドにかけられたクロスを引き裂いて、小さく丸めて玉にして、壁に作りつけられている燭台にぶつけてみるというのは、どうだろう?

蝋燭が落ちて火がついて、大騒ぎになったら、その隙をみて逃げ出すというのは?

「だめよ」

城の人間が火事に気づく頃、自分はきっと丸焼けだ。

敵城の地下室に鎖につながれたまま焼け死ぬなんて、惨めすぎる。