グノーがセナに恭しく差し出したのは虫取り網だった。

弟とその従者を代わる代わる見て、セナは「アハッ!」と妙な笑い声をたてた。

「わざわざすまなかったね。でも、もう、いらないかな?」

イリアの漆黒の瞳に剣呑な光が揺らめいた。

「僕はね、蝶よりも、もっときれいなものを手に入れたんだ」

挑発するようなささやきに、弟の手がすっと振り上げられる。

攻撃的な所作にぎょっとして、セナはあわあてて後ずさったが、イリアはいまだ従者の手の中にある虫取り網を掴み取っただけだった。