「わぁーお!自ら出向いて来るとは驚いたな!」

長身の従者を従えた黒服の弟王子を前にして、セナは眼鏡を持ち上げた。

ひびの入ったレンズ越しに見る弟は、表情を完全に消し去ってはいるが、これまで一度として足を踏み入れたことのないこの第三離宮に、わざわざ出向いて来たのだがら尋常ではない。

つまり、あの「銀の天使」が、それだけ大切だということだ。