ゆっくりと前に進み出た。

震える手でつかんだ剣は、ずしりと重い。

覚悟を決めて顔をあげた時、漆黒の瞳が値踏みするように、こちらを見ていることに気がついた。

「そこまでだ」

前に佇む少年が、ユーリだけに届く声でささやいた。

「物陰で俺の従者がお前を狙っている。その剣を振りかざした瞬間に、お前の心臓に矢が刺さる」

ぎくりとした途端、ユーリの手から鉄のかたまりが滑り落ちた。

剣を餌に、ユーリを崖から引き離した少年は、ためらいなく前に進み出て、拾い上げた剣を鞘におさめると、マントを翻して背を向けた。