(ここにグレアムがいたら何と言うかしら?)

塀によじ登りながら、大好きだった青年の言葉を思い出す。

「一国の王女が、小犬を城内に持ち込んだ挙句、廊下を走り回って調度品を壊すなどもっての他!」なんて、怒られたことがあったっけ。

口うるさかったけど、グレアムのことが、大好きだった。

ユーリの髪を短く切った時、グレアムの大きな手が震えていた。

本当は、最後の最後まで、あの手を離したくなかった。