「舞桜!!」


蓮の声が体育館に響き、あたしはゴールに向かって掲げたバスケットボールを下して振りかえる。


バスケットボールを持ったユニフォーム姿の蓮が
美しい笑窪を作って笑う。


「もうそろそろ練習やめて帰った方がいいぞー!」


‘外もう暗いから’そう小さく言いながら開けっ放しになった体育館のドアの外を親指で指す。


7時を指す時計をちらっと見て、頷く。

「じゃぁ帰る。送っては....くれない...よね。」
あたしがため息をつきながら蓮を見ると、
蓮は眉をハの字にして申し訳なさそうに「ごめん」と呟く。



その声があまりにもあたしにとっては痛くて、
焦って明るい声で言った。

「ううん!今日もまた亜矢音のとこ・・・・?」


明るく言ったつもりが、
どうしても最後がうまく言えなかった。


それに気付いてか、少し気まずそうにうなずく連。


「そっか!そーだよねー!連にも彼女ができたことだし!
あたしとなんか帰れないよねー」
冗談っぽくそう言って無理に笑う。


「っ....」
何か言おうとしている連を無視して言葉を続ける。
「じゃぁもう遅いからあたし帰るね!自主連お疲れ様~
ばいばいー!」


手を振ってそのまま走って体育館を出ていく。
後ろからすまない、と謝っている連の声が聞こえる。



やっぱ...あたしじゃダメだよね...。
涙で滲む視界を人差し指で拭い、走って帰った。