汚れきっていたと思っていたユリツキ。
微塵も罪だと感じていなかった優里。

ユリツキへ感謝さえしていた。


「こんなになるまで
どうしてもっと早く
帰ってこなかったの?
・・ばか・・」
涙が一筋零れる。



頼らず、
あてにされず、
尊敬させも受けた事が無く、
ただ漠然と生きてきた者が、
初めて注目された術が
”人殺し”。

己の崩壊も気づかず、走りぬけ、
己から進んで落ちていったユリツキ。

「ユリ兄、今日は何食べる?」

「星が凄く綺麗だよー」

「今日は暖かいね・・・」

報われる日が予想できない日々、
柔らかい言葉はそそがれていた。


住居はそれ程大きくはないが、
土地が広く、
家の裏手には小高い山があり、
自然の真中に住み、
犬十数匹を飼い、
猫も十数匹勝手に
住み付いていた。

寝室の窓からは
犬たちが遊び駈け回る様子が
いつも見えている。