きみに守られて

リアガラスに命中した弾丸が、
偽のダイヤモンドのような鈍い光を
後部座席に散らばらる。
”ガン!ガン!”
誰かが鉄パイプで車体後部を叩いている異様な
衝撃音が車内に伝わる。

(大島さんに当ったらヤバイ!)

パトカーの台数はすでに
十二、三台に増えていた。

追いこまれて行くユリツキ。
手馴れたハンターに狙われた獲物の如く
ジワジワと計画通りなのか、
倉庫街の袋小路へ追い詰められる。

出口は一つ、
数十台のパトカーに塞がれた所だけ。
一台のパトカーに最低二人の警察官が同乗して
二十五人以上の警官らが銃を構えて
車を包囲していた。

車内の二人。

「なぜ、私たち狙われているの?」
助手席の床にすっぽりと体をはめ込んでいる優里。

「だってこの車盗んだし、多分、原因は車だ」

「だからって拳銃で撃つことはないでしょう?」

「十分な発砲理由になるんじゃないの?車泥棒も」

「殺されちゃうのかな?」

「多分、この世界の常識なら殺されるね」

「多分って・・・」

車内の沈黙が車外に伝染したかのように、
あれだけ発砲した警官が今度は撃ってこない、
外を覗く。

「なんで撃ってこないんだ?」

少し上体を起こし
車のトランク越しに警察官を伺う。
人一人も通れぬ程にパトカーが並べられていたが、
警官達はどこかリラックスした風に、
ただユリツキらの車を眺めていた。

簡単だった。

車の持ち主が現場に到着するのを
待っていたのだ。

逃走中の不慮の事故として射殺は可能、
逃げ場を無くした犯罪者を裁くのは
被害者だった。