(この女の子を守る勇気がぼくにあるのか?
狂った暴力の数々から・・。
たとえ物理的に守れても、
目からか入る悲惨な物からは守れない。
肉体につく傷と心につく傷、
この二つから同時に守る事はできない。
見なくても良い事、
知らなくても良いこと、
経験しなくても、
生きていく上でなんにも必要がないコトを、
これから大島さんは感じていくんだ。
ぼくが投げかけれる言葉で
心を癒せる程付き合いもないし、
信頼もまだない。
守るって、どんなコトだろう・・。
信頼してもらうって、
どうすればいいんだろうか)
答えなどでるはずもない問題を必至に探る。
眠れないユリツキは朝を迎える。
そして気づく。
眠れないのではなく眠気がしない・・・。
それに心底から湧き上がりみなぎる力がある。
目覚めて二十四時間が
過ぎようとしている気だるい体の感覚ではない。
(全然平気だ。
いつもならボーっとしていて
凄く眠くなるのに。
昨日の電車。眠気がこない体。
力の入り方が違う体)
思い立って浴室へ入る。
壁に向かって拳を握りタイルを殴った。
発砲スチロール並に簡単に割れ、
穴が開く。
浴槽を蹴る、見事に粉々になる。
(痛くない、破壊力もある。凄いぞ)
生殺与奪の力。
静かに歓喜に震える心。
この時はまだユリツキは
”人間”であった。

