人々の娯楽は野球やサッカー類の
スポーツと呼ばれるモノでなく、
公式に認められた殺し合いが世間を熱狂させた。

ユリツキらの世界にあった格闘ゲーム
戦争ゲームが実戦化され、
生身の人間が行うもので
ルールは戦闘不能か死、
そこには”賭け”が成立していて、
金銭が絡んだ試合は
街の片隅から全国放映レベルまで存在した。

負けて生き残った者はリング外で命を狙われ、
勝利した者も敵意をもたれ襲われる始末。

そして”復讐”が公に実現できて、
理由なき殺人を行った者は
顔写真と情報がマスコミによって、
日本中に流され発見者は被害者の身内の判断で、
手を下せられる。

そう被害者への同情は
快楽殺人を民間人に与えた。

もっとも簡単な殺しの快楽はペットへも移る、
ペット業界は飛ぶ鳥を落とす勢いで
商売繁盛している。

虐待するため、
ストレスを解消する為に飼う者たち、
我が子を殺さない為に
猫を飼い続ける母親、
女に捨てられるたびに犬を飼い
虐待する男。

人を襲わせ人を食べさせる成金社長。

一時間前に売れた犬や猫が、
一時間後に廃棄物としてペットショップが引き取る。

極端な自分勝手さが
世間のバランスを保っていた。

自分だけが満足できればそれでいい
狂妄な世界”正”もなく”儀”もない
狂奔した社会にユリツキらは来ていた。

ユリツキはテレビを消す、
静かに立ちあがり、
枕の端を細い指で掴みながら眠る優里を見た。