きみに守られて

「生きればいいんだよ、
なんならぼくが付き合ってやろうか?」

声の方を向く。
さっきまで自分の回りをうろうろして、
付きまとっていた、
自分を助ける為に死んだはずの男が立っていた。

「うらめしや~成仏できないよー」

笑いながらつっ立っている。

「なぜ!どうして?」

「見て見て、服ボロボロ。
あのね、全然痛くないんだ。
電車に引きずられて
五百メートル程先の駅でやっと止まってさ電車。
そんで戻ってきた。
実際もう終わったって思ったけどね、
やっぱ違うわ、この世界」

あっけらかんと軽く言い放つユリツキ。

「そうですね、やっぱりこの世界は違うのですね」

ぽろぽろ泣き始める彼女。

「どうしたの?
あ、怪我してるね、
大丈夫?痛い?
ごめんね突き飛ばして。
力加減分からなかったから、
ごめんね。泣かないで・・。」

励まそうと彼女に触れる。
涙は勢いを増すだけ。
小刻みに震える女の子。

電車の機械オイルで全身が汚れたユリツキ。

「あぁ、ごめんぼくって汚らしいね。
怪我させた上に
こんな汚い手で君に触ってしまった。
ごめんよ、泣かないで・・・」

オイル塗れの服で、
自分の汚れた手を拭くが、
簡単にオイルの汚れは落ちない。

「あれ、あれ?綺麗にならない、
汚れが落ちない。
全然落ちないよ。
これじゃぁダメだ。触れない・・」

ユリツキも小刻みに震えた。

「違うんです」

ユリツキの手を握る。
「ありがとうございます。
もう、泣きません」


「汚れているよ?汚いよ?」

「平気です。汚くなんか、ありません」
(ぼくは・・・
きたなくない・・・?
ぼくは、生きている・・?)

ユリツキは、自分の服の汚れが
無い部分を探しだし、
彼女の切り傷の手当をする。

「もう、死のうなんて事しないでね、
お願いだから。
これで解ったでしょ?
この世界は違うって。
それでここは君が生きていく所でもない。
頑張って生きて、戻ろうよ。
それで、あの犬コロを二人でぶっ飛ばそうよ、ね?」


ユリツキの肩の部分に電車の車輪の跡がある。