遠くから罵声じみた
狂気の声ともとれる声がする
「ころせ!ころせ!」と。
二人は無言だった。
代々木神園町の公園が見えた頃、
夕日が空と森を綺麗に赤く染めていた。
何処からか飛んできたのか
卵型の白い風船が当てもなく
悲しげに、夕映え空を飛んでいた。
山手通りをこえて井の頭通りを進む。
彼女の家を知らないユリツキは
ただひたすら無言で、
彼女から自分の存在が確認できる背後を
歩いていた。
視界に入りそうになる数体の
放置された死体の姿からも守り、
盾になりながら、
今、出来る最大で小さな防御を
果たしながら歩いていた。
世田谷区に入り、
陽も沈み、辺りが順序良く、
暗くなる。
「疲れてない?おんぶしようか?」
「お父さんもお母さんも、
違う人になってるのかな・・」
会話にすらならない。
他人を思うなら、
自分から人に合わせるしかない。
「多分ね、
そして違う君とぼくも存在しているかもね」
「歩きながらずっと考えてました。
違う父と母がいたら
あなたが言った事は真実なんだろうなって」
「覚悟が必要だよ。
どんな事になっても、
この世は偽者で本当の姿でないことを
肝に命じていてほしい」
偉そうに言える立場でもなかった。
「あそこを左に曲がって三軒目が、私の家」
立ち止まり指をさす姿。
戸惑いがヒリヒリと伝わる、
微かに震えた指先である。
狂気の声ともとれる声がする
「ころせ!ころせ!」と。
二人は無言だった。
代々木神園町の公園が見えた頃、
夕日が空と森を綺麗に赤く染めていた。
何処からか飛んできたのか
卵型の白い風船が当てもなく
悲しげに、夕映え空を飛んでいた。
山手通りをこえて井の頭通りを進む。
彼女の家を知らないユリツキは
ただひたすら無言で、
彼女から自分の存在が確認できる背後を
歩いていた。
視界に入りそうになる数体の
放置された死体の姿からも守り、
盾になりながら、
今、出来る最大で小さな防御を
果たしながら歩いていた。
世田谷区に入り、
陽も沈み、辺りが順序良く、
暗くなる。
「疲れてない?おんぶしようか?」
「お父さんもお母さんも、
違う人になってるのかな・・」
会話にすらならない。
他人を思うなら、
自分から人に合わせるしかない。
「多分ね、
そして違う君とぼくも存在しているかもね」
「歩きながらずっと考えてました。
違う父と母がいたら
あなたが言った事は真実なんだろうなって」
「覚悟が必要だよ。
どんな事になっても、
この世は偽者で本当の姿でないことを
肝に命じていてほしい」
偉そうに言える立場でもなかった。
「あそこを左に曲がって三軒目が、私の家」
立ち止まり指をさす姿。
戸惑いがヒリヒリと伝わる、
微かに震えた指先である。

