きみに守られて

(これがそうなんだ。
これがここの、現実なんだ)
理解し始めた。



(探さなきゃ!早く!早く!!)

最初の曲がり角へ遮二無二駆けていく。
彼女が歩いたであろう道を追う。

周りに注意しながら、
彼女がどんな服を着て
どんな髪型で、
どれほどの笑顔なのか
想像すらする余地なく、
体全体が暴れているが如く
動き回る。

そして見る、
無残な光景を。

猫か鼠の死体を放置するように
ビルとビルの隙間に
積まれて押しこめなられた、
何体かの死体。

車のタイヤに押しつぶされた
蛙の死骸ように
車道に残る人らしき跡や、
内臓らしい形。

血まみれになって、
ちぎれかけた片足を引きずる
ひん死の人間。

浮浪者が地面に座り込み
日向ぼっこでもしてるかのように
置かれた白骨死体。

(どこだ!大島さん!どこだ!)
ただ、彼女が視界に入ることだけを願っていた

(事務所?事務所だ!ここらにあるんだよ)
場所はほぼ、検討がついていたが
はっきりとした位置の特定は難しかった。

(くそ!こんな事なら一回ぐらい
事務所を探しにくればよかったよ!)


(どうか、
まだ何も見ていませんように。
早く会って説明しないと、
何も知らないままに、
いきなりあんな物を見たら
大島さんはどうなるんだよ。
願わくばまだ、見ていませんように)

神がいない世界で神に祈った。