きみに守られて

ユリツキは
たえられず、
最後にもう一度振りかえる。

人ごみの間に見え隠れする、
不器用に愛した人の形を追う。

手も届かないほどに、
すでに、
声を上げても、叫んでも、
無駄だと思えるほど、
人は多く、
彼女との距離は
遠く離れていた後ろ姿。
どれが誰の後ろ姿は、
どれが愛しい後ろ姿か、分からない。
もう、判断、できない。

「ごめん、
君を幸せに出来る運命を持っている男は、
たった一人なんだ・・。
俺ではないんだ・・

俺は君の、永遠を守れた・・」

ユリツキは目から流れる物を、
力限りたえ切る、重くゆっくりした瞬きをした。

自分が進むべき方向へ
向き直ろうとした。

その一瞬、

大勢の後姿と大量の能面が
入り乱れていた群衆の流れの中で、
そこだけ、
黒髪が、
さも春風に誘惑されたように
舞ながら優里が振り向く。

見失った筈の大島優里を
もう一度、
ユリツキの濡れ光る眼の中に映した。

二度目に交わった二人の目線は、
星河に埋もれた流れ星のように直ぐに、
人々にかき消された。

「あの大島優里と
二回も目が合ったよ・・。嬉しいな」

ユリツキは静かに座り、
冷たいビルの壁に背中をもたれた。

眺めているだけで疲れる
目障りなほどの、
沢山の足と靴が
目の前を通りすぎていた。

すでに集中力が欠けた顔と重い瞼。

「本当にごめんよ、
俺はここまでだから。
ごめんよ。
嘘をついた俺を許してほしい。
君がいたから俺は幸せだったよ。
”優里”とても綺麗だよ。
ああ・・眠い」

極度の疲れと睡魔がユリツキを襲う。