きみに守られて

ユリツキは思わず
優里の目を見てしまう。

気配につられて優里もまた
ユリツキの目を見る。

すれ違い様の一瞬だった。

ユリツキは一欠けらの興味も無さげに、
平然と目を反らし、
無表情で先に進む。

それはかえって
空々しいほどの態度であった。

緩やかな欅並木の坂道、
優里は何かを、大事なものを、
忘れたような真顔をする。

振りかえる。

春の陽光を乱反射させる
ショーウインドウに沿って歩く、
会った記憶の無い男の後姿を、
妙に懐かしく感じて眺めていた。

見知らぬ男の後をダッシュで追い
”どこかで会った事ありますか?”
と、自分の立場を忘れ、
”安い逆ナンパ”のように
声をかけてみようかと悩む。

同時に、とっさに、
後ろから抱き締めようかなと、
意味不明な好奇心にもかられた。

が、あの女社長が
「優里。
何ぼ~っとしてるの?行くよ!」

彼女達は”曲がり角”を曲がる事無く、
直進していった。