肩に乗った正樹の掌が温かいと
思っていたユリツキ。
正樹は、頭をシートにくっ付けて
地平線を眺めていた。
「色んな思いがグルグル頭を巡る。
正樹が言ったこともくるくる周ってる。
元の世界で映画やテレビに映るユリの姿が
重い思い出となって将来の俺を
苦しめるかもしれない。
だけど、
それ以上に俺は
誰かに愛されるなんて資格、無いんだ」
「アホ!アホ!アホアホ!アホアホアホ!」
正樹は連呼した。
車のキーを回し、
軽トラとは思えぬほどの鋭い急発進で、
走り出した。
目的地の”釣場”へは車は曲がらず、
直進して行く。
軽トラックは
気楽に口を開けられない程に
烈しく左右に揺れる。
見慣れた原田家の畑の前に、
四本のタイヤが
砂利と土を水飛沫のように舞い上げ、
止まった。
与一郎がポツンと、
タオルを首に巻き畑を耕していた。
正樹はサイドブレーキも上げることなく
飛び出し、
五六歩駆け出した位置で、
大きく息を吸う
「おやじ~!い~!ま~!か~!ら~!
ユリツキを!ぶん殴って!いいか~!」
「おいおい、俺、殴られるのかよ」
ひとり言をもらす。
与一郎は手を休め、
上半身をおこして、
腰を二度叩く。
そして笑顔を見せ
再び畑仕事に戻った。

