たい肥置き場が、
新芽芽吹く山の麓の茶畑越しに
視界へ飛び込んできた。
正樹は大量の枯れた糞の頂上で
腰に手を当て、
仁王立ちしていた。
たい肥運びは三人で一気に積みこみ、
二人が軽トラで目的地まで運ぶ。
一日七往復だった。
何度目かのたい肥運びのさなかに
与一郎がユリツキに尋ねた。
「ユリツキ君は
正樹の過去を知っているようだね」
「はい、聞きました」
「ならば、額の傷のことと、
井上健治という男の名と知っているね」
空気が締る思いがした。
「はい、知っています」
「正樹の傷は、
私の車に接触しそうになって
出来た傷なんだよ」
太く鮮明な声が車内に響いた。
「井上という男は正樹が警察に保護され、
施設に預けられたのを知っていたんだが、
引き取ろうとはしなかった。
自分が引き取っても再び正樹に
同じことをさせてしまうだろうと、
あの男も気付いていたんだね」
「井上って人を知っていたのですか?」
ユリツキは言葉を待った。
「あの男はね、あの事故いらい、
私を探していたようだ。
正樹が逃げ出す以前から、
私を探し回っていたらしいのだがね、
私は見つからないまま、正樹は消えた。
あの男は一時は楽になったと
諦めたのだけれど、
心に遣る瀬無さがあったのだろう、
思いなおして
私と正樹を見つけ出した。
そして私に土下座までして
正樹を幸福にしてくれと、懇願した」
新芽芽吹く山の麓の茶畑越しに
視界へ飛び込んできた。
正樹は大量の枯れた糞の頂上で
腰に手を当て、
仁王立ちしていた。
たい肥運びは三人で一気に積みこみ、
二人が軽トラで目的地まで運ぶ。
一日七往復だった。
何度目かのたい肥運びのさなかに
与一郎がユリツキに尋ねた。
「ユリツキ君は
正樹の過去を知っているようだね」
「はい、聞きました」
「ならば、額の傷のことと、
井上健治という男の名と知っているね」
空気が締る思いがした。
「はい、知っています」
「正樹の傷は、
私の車に接触しそうになって
出来た傷なんだよ」
太く鮮明な声が車内に響いた。
「井上という男は正樹が警察に保護され、
施設に預けられたのを知っていたんだが、
引き取ろうとはしなかった。
自分が引き取っても再び正樹に
同じことをさせてしまうだろうと、
あの男も気付いていたんだね」
「井上って人を知っていたのですか?」
ユリツキは言葉を待った。
「あの男はね、あの事故いらい、
私を探していたようだ。
正樹が逃げ出す以前から、
私を探し回っていたらしいのだがね、
私は見つからないまま、正樹は消えた。
あの男は一時は楽になったと
諦めたのだけれど、
心に遣る瀬無さがあったのだろう、
思いなおして
私と正樹を見つけ出した。
そして私に土下座までして
正樹を幸福にしてくれと、懇願した」

