「ほら。この傷見えるか?」
正樹は健康的な前髪をかきあげ、
前のめりになり生え際にある、
三センチ程の一文字傷を見せる。
瞳が瑞々しく潤んでいた
「この傷から、
俺の当り屋人生が始まったんだ」
井上正樹、三歳。
巨大なセメント工場が
ひしめく地方工業都市で
季節は秋口だった。
父、健治が50CCのバイクに
正樹を背負った母、
公子を二人のり禁止の荷台に乗せ、
排気ガスがたちこめる国道を走っていた。
粉塵爆発でも起こしそうなほどの
煙った道である。
交通ルールをまったく無視した運転で
健治は違反をしている意識も無く、
口笛でも吹いていそうな気楽な顔で
堂々と走っていた。
公子は激しい交通量の中で
不安を隠しきれない青ざめた顔である、
それ程人間三人には
50CCのバイクは小さく、
不安定であった。
信号機が赤になり
先頭の車が停まり、
二台三台と速度を落とし
八台の車が列をなした。
正樹は健康的な前髪をかきあげ、
前のめりになり生え際にある、
三センチ程の一文字傷を見せる。
瞳が瑞々しく潤んでいた
「この傷から、
俺の当り屋人生が始まったんだ」
井上正樹、三歳。
巨大なセメント工場が
ひしめく地方工業都市で
季節は秋口だった。
父、健治が50CCのバイクに
正樹を背負った母、
公子を二人のり禁止の荷台に乗せ、
排気ガスがたちこめる国道を走っていた。
粉塵爆発でも起こしそうなほどの
煙った道である。
交通ルールをまったく無視した運転で
健治は違反をしている意識も無く、
口笛でも吹いていそうな気楽な顔で
堂々と走っていた。
公子は激しい交通量の中で
不安を隠しきれない青ざめた顔である、
それ程人間三人には
50CCのバイクは小さく、
不安定であった。
信号機が赤になり
先頭の車が停まり、
二台三台と速度を落とし
八台の車が列をなした。

